十界の大曼荼羅

十界の大曼荼羅

日蓮大聖人の御本尊は、法華経の如来重量品の「時我及衆僧俱出霊鷲山」の偈の文二句を図顕せられし物である。されば此の御本尊の中には衆生世間もあり、国土世間も有り、自も有り、他も有り、四聖も有り、六道も有る。現実世間の十界宛然の大曼荼羅である。餓鬼畜生の残害貪欲の衆生身に仏性を見、仏身を見出して、尊重礼拝せねばならぬ。我等が居住する此の娑婆世界は、生老病死・戦争・掠奪・権力・圧迫の多い処ではある。此の如き諸の患難は、衆生己心一念の妄想顛倒の筆に由って画き出されたる影像である。収奪殺人の妄想を止むれば、此の国土本来常寂光土である。我此土安穏が、此の娑婆世界の本来の相である。アメリカが全部撤兵すれば、越南印度は其のまま平和の天地となる。此の如く十界の依正色心を本尊に図顕して恭敬礼拝せしむる物が、則日蓮大聖人の十界の大曼荼羅である。此の国土を常寂光土として本来尊重なるものとし、此の衆生、此の人間を根本的に尊崇すべきものとして図顕せられたるものが則十界の大曼荼羅である

(昭和四十六年秋彼岸「三大秘宝問答しょう」)

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