現代の宗教改革
人間社会に於ける諸種の問題は、自然科学の発達に伴うて益々人類の恐怖を増長し、災害危害が激烈になりました。此の災害を消滅せしめんが為に、もし軍備を拡張すればするほど、化学発明をすればするほど、災害は弥弥熾(いよいよさかん)になり迅速になること、火に薪を加えるが如くであります。
暴力の行使が絶対的危険の段階に到達に到達したる時、他の暴力を使用する事は、暴力排除に役立たざるのみならず、一層の危険を招きます。此れを以て絶対的非暴力の威力を発揮して、此の暴力を排除せねばなりませぬ。暴力は所詮機械力であります。
機械力の暴力は、精神の凶暴残忍の表現に他なざるものであります。此の精神を慈悲仁譲に変化せしめ、不殺生戒を受持せしむる事は、本来の人間性への回復であります。人間性への回復の為に宗教が活動せねばなりませぬ。
寿量品に「毒発し悶乱して地に宛転す」と説かれてました。此の狂子を治せんが為に留め置き給える良薬が南無妙法蓮華経であります。経に「汝等取って服すべし、差えじと憂ふる事勿れ」と入念にも証明されております。
(昭和四十四年四月五日「立正安国論講讃」)