立正安国の御祈念と不惜身命(横塚上人ジャフナ法難)

立正安国の御祈念と不惜身命(横塚上人ジャフナ法難)

南無妙法蓮華経 スリランカーの皆様が誠に考えられたお仕事は、誰も想像もできない立派な御修行でありました。これは大統領の命に背いてやりました。けれども所詮はランカーに平和を作りあげる、その根源を自いみいだして動かれました。ほんの二・三名の人にして良く誤らずにこの大仏事をなさいました。
ここでまた一段落つきましたが、この日本山の方針では我々が次から次とランカーの前途のために身命を捨て、屍を並べていくその内に仏事が出来ると考えました。私もその方針を一応認めましたけれども、昨10日の昼過ぎにランカーの治安大臣が直接、「日本山の最高指導僧にもの申したい」と申しました。電話をもって尋ねてきました。
それでランカーの日本大使館に問い合わせましたけれども大鷹弘大使も不在で間に合いません。直接その話を聞きました。「ここでまた、あなた方の一門が次々に屍を並べてランカーの永遠の平和を作ろうとしている。これも一つの方法である。しかし国際的に見てスリーランカーは仏教国である。
他の仏教国のお坊様がランカーに渡って一人ならず犠牲を払うということは、ランカー政府も耐えられない問題となった。」
この一人のお坊様の虐殺が日本でも大きく取り上げられましたが、これは世界の問題になりました。いまだ世界の仏教徒の中で、他国の平和の建設のためにと言って犠牲になった例はありません。
これは一人、日本山のお坊様の覚悟であります。この後、二・三人と続いてここに菩薩行を起していくことは、日本山のお坊様として覚悟を決めてかからねばならないことと考えかしたが、治安大臣のお話では、何とかここしばらく日本山の開教をジャフナから引いてもらいたい、と申します。
ようやく重大さを世界がここに目をつけて驚いておる姿を見ました。
それでこの人も交えて、ランカーの仏教復興・宝塔湧現を促進することになるでしょう。
おりもおり、南インドのコモリン岬の仏事が起きました。南インドは竜樹菩薩の大乗仏教弘通の本家であります。そこからまた大乗仏教の興隆が起るに違いない。そのために日本の方も力を入れて、タミル族の仏教興隆に協力しようという話が声高く叫ばれるようになりました。
ここで菩薩行といっては、日本山は屍を並べてこの大仏事を完成しょうと思いましたが、国際的に考えるとスリーランカーは仏教国、その仏教国で仏教僧侶をしきりと犠牲にたたせては、ランカーの面目もたたない。それでここはランカーの大統領以下の思し召しとして、しばらくジャフナの開教を取り止めて、以後、政府の、自分達の手によって両民族の融合に努力するという申し出を信じてまいりましょう。
これも日本の方も世界の方も、一人の犠牲によってかくも世界を振動させました。
今後は南インドのコモリン岬に宝塔を湧現させます。そこにタミル族の仏教信仰を養い育てて、それをランカーのタミル族のところに送って、タミル族自らランカーに宝塔を建てて、シンハラ民族と一諸にらい礼拝供養するようになったならば、なお平和にことがすむ。けれどもこれには多少の時間がかかる。その時間を日本山が補ってタミル族の信仰を養っていこう
という腹が決まりました。そこでここではランカー政府の政策、面目を生かしてゆきます。治安大臣のお言葉では政府の面目のためにもジャフナからこれ以上犠牲者をださないようにして頂きたいと申しております。
いまや世界の人類の頼るところは、この本門の教主釈尊の三大秘法だけ。これは説教せずに時が来て、広まります。あのキリスト教国のロンドンに一人の反対者もなく、宝塔建立がすすみ、市民がみな賛成して協力者になっております。この日が目に見えます。
精神的なものが世界を開いております。これを信じて少し手間がかかるけれどもスリーランカーの国家の政策の成功によって、ここの難局が一応治まり、そうしてタミル族の本場から仏教復興の使いが渡って協力して、ここが助かる道があくかと思います。
それで日本山のご出家の道は、横塚上人一人を死なせただけで我々は死ねないのかと思うでしょうが、
しばらくこの一人の死というものが、どんな大きい力を、いま世界に示しておるかを見なければならない、滅びない仕事、動かす力はこの横塚上人一人の犠牲で、ことが足りると思われました。
あなた方はまた死に場所をどこか探して下さい。日本山は有難く世界の平和建設の基礎になって追っていかねばなりません。
一人の犠牲に対して耐えて下さい。身命をここでは忍んで永らえて下さい。そうしてまた死に場所を探して下さい。本当に僅か三十二歳、この世界を動かしました。誰が聞いてもこの尊いスリーランカーの平和建設の基礎を作りました。
いまここに、この人の犠牲がやがてまた他に開くでしょう。尊いことでした。有難いことでした。
あなた方の命の捨て所、ここしばらく我慢、政府の政策を助けていくように致します。時がいま来たようです。日本の方はタミル族の仏教復興を助ける気になり、世界中がこういう気分になって来たのです。あなた方も臆病ではない。ただ死ぬる場所をもう一つ選びなさい。有難いことです。
------------中略 ----------
可哀想に若くして身命を捨てました。これもやむを得ません。私も年寄って動けないのに、まだ生きておる。こういう者もある。これもまた仕方ない。
(1984年11月11日 熱海道場)


横断幕後方中央が横塚上人

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