観心本尊

観心本尊

人は唯パンのみを食って肉体的に生きる事は出来ますけれども、肉体本位の生活は、歓喜も無ければ感謝もありません。放逸なる人間、秩序無き社会となり、狂暴なる猛獣、怠惰なる畜生となり、強盗・強姦・殺人の社会となります。アメリカのニューヨークを始め諸大都市は、まさに其の見本であります。裁判も監獄も何の役にも立ちません。都市全体を監獄とし、国土全体を監獄とせねばなりませぬ。何処も犯罪所であり、誰も彼も皆犯罪人なるが故であります。手の着け様が無い危険なる社会生活であります。宇宙旅行をしても、海底潜水艦を建造しても、アメリカに平和は到来しません。精神的堕落の現象は、アメリカ人の心の中に起こりました。

西洋文明の根本的欠陥は、外界物質の研究に終始して、人間をも亦物質の一種として取り扱いました。是に由って本来尊重すべき精神の活動さえも、亦物質の一種の作用の如く考えて、善悪の差別も無く、邪正の相違も判らなくなりました。従って人間も、動物も、瓦礫も、大小便も、物質として大差無い様な人生観を持って生活する様になりました。されば他人を軽蔑するのも、他人を殺すのも、さして罪悪でもない様に想う結果となりました。讃嘆すべき他人を悪口します。

現代悪世の大火と、利剣と流血との恐怖から人類を救護して安穏ならしめんが為に、一切の人々に対して本来尊敬すべきものを教えます。其れは人の心に有ります。人に尊敬の心を起こさしめます。是を観心本尊と称します。

人に対して尊敬の心を実現せんが為に、身に礼拝を行います。是を担行礼拝と称します。

人に対して尊敬の心を実現せんが為に、口に讃嘆の詞を述べます。是を担信口唱と称します。是が則日本の仏法の三大秘法であります。日本の仏法の三大秘法は、併ら、担だ人こそは本来尊敬すべき者である事を教えたるものであります。本来尊重の四字の発見が、現代の人間の苦悩を解脱せしむる唯一の宗教であります。

(昭和五十年五月八日パリ道場開堂供養)

タイトルとURLをコピーしました