還著於本人

還著於本人  昭和五二年十月二五日
王舎城の世話をしておる人に、マハラティーという人がおりますが、今はビハール州の上院議委員を努めております。ーー中略ーーー
マハラティーさんに手紙を書いて「私はインドに行かない。私はインドに何一つ悪いことをしていない、それなのに、私に対して御無礼な処置を取った。それが、百姓や労働者が失礼なことをしたのならいいけれども、インドの中央政府がした。
法華経の普門品の中に「還著於本人」というお経文がある。
人を呪ったり、毒を盛ったり、法華経の行者にそんなことをすると。それがかえって呪った人にその毒が巡る。呪いが身に付く、という。そんなお経文。インディラガンディーは別に私に悪意は持っていなかった。しかし責任がある。首相という時に、その内閣で日本山弾圧の指令を出した。私に、日本山に何も過はない。その日本山に秘密指令を発布して弾圧をした。その過がインディラに還ってくる。インディラが罪が有るか無いか知らないけれど、兎に角逮捕された。私はまだ逮捕されない。
インディラ首相は逮捕された。これが日本山弾圧の報い。そんならば、今のデサイ(首相)が好意を持ってあとの王舎城復興計画を進めると言うけれども、それでインドに帰ってくれというけれど、デサイの基盤になっているジャナタ党(人民党)、これがヒンズー教徒の固まり。思想的に仏教弾圧の本家だ。デサイも何と言ったって、その地盤が仏教弾圧の地盤だから、帰っても良くない。帰らない。
私が帰るのには、そちらが取った処置が誤りだとはっきりさせて、そして招待するのなら帰る。そう云うこと。
インドのために、お弟子様方が、あの独立運動の間は随分苦労した。監獄に入れられたり、丸山さんは独立をそそのかしたとして、その文章が日本の方で雑誌に発行された。そうすると、あちらから日本語の判るスパイが来て、私らの足取りを調べる。それで調べて報告した。これは理屈なしに逮捕した。それで丸山さんは牢の中でお断食を始めた。そうしたらインド中の新聞がそれを報道する。
「日本の御坊様が逮捕されて、監獄の中で無期限断食に入った」と。そうしたらインド中の各都市で解放運動が起こった。「日本の御坊様をすぐ釈放しろ」と。それで、英国の統治だったけれど、どうも一人の御坊様を監獄に入れてみたけれど、もしや断食したの、死んだの、ということなると、大層英国の政治がインドの民衆に対して不利になる。
これはもう、監獄に入れておくわけにもいかず、日本に返す。それで、「これから先、またおいで下さっても結構ですけれども、今は時局が混乱しており、あすから、暫くお待ち下さい。そのかわり、二等客船か一等船でお帰り願う。日本にお帰り下さい」
こしたことは、インドの心ある人は知っているのね。それに対して、よくもまあ悪態をついたもんだ。
日本山がこんなに、宝塔様をいくつでも建てる。こんどはダージリンに建てる。そうしたら、驚いてこの金はどこから来たか判らない。「これはアメリカのCIAの金だ」という中傷を採用した。どうも金の出所が判らない。ここだって判らない。あの宝塔がいくらかかるかはだいたい判る。その金がどこから来たか判らない。それはどこか秘密の経路で来た。そこえいろいろ青年が来た。髪が長かったり、これは暗殺団だという。そうかもしれない。それなら今の内に国外退去を命じる。日本山の庵主さんも八木さんもみんな国外退去を命じる。こういう中傷が日本山に対してあったですね。あのインディラが「今日も何本も電報が届きますよ」と言う。その時はその電報の内容がどんなのか私は聞きませんでしたけど、そこで内務省の役人が警察を使って調べた。そうすると麻薬を使う者、お酒を飲む者がいる。「そんなら暗殺団もいるだろう。日本山にあちこちに足場をつくらせないように追っ払ったらいい。」ということで、弾圧政策をとった。そしたら、今度はインディラが金の出所が判らんとかなんとか言って逮捕された。日本山に呪いをかけたのが、そっくり我が身に還った。
マハラティーさんが兎に角ビハール州で上院議員をしておるから、この手紙を公開するといい。そうすると、インディラもその噂を聞く。面白いですね。お題目を弘めておるとインドがひっくり返る。ネパールもひっくり返る。
――中略―――
日本山の動きというものは、押さえてしまっても、そこで消えるものではない。どこでかまた動きよる。その動く余勢がネパールに反響する。アジアで「ネパールで御仏舎利塔を壊した」ということに対して、ここのランカあたりからも電報で抗議しておる。で、国王も困って、小さい宝塔を作って「落慶法要をするからみんな仏教徒は参れ」と言う。そしたら参らない。「もとの宝塔を作って返せ」という。押さえられている者は深く考えていますからね。ちよっとした誤魔化しではここは動かない。宝塔破壊の王朝は存在を許されない。暴力革命ではないですけどもね、そこまで国民は、ぞっと下のほうで連結してしまう。そして私に「帰って宝塔を建てて下さいと言う」。
宝塔は壊されてもどうもない。 政府が「宝塔を建てた代金の倍を返すから収まってくれ」と言う。こんな金を欲しくて宝塔を建てたんでないからそれも承知しない。今の信者の代表者が、もと国防大臣をしていた。そうして政府のやり方を全部改革しようとした。第一その土地が幾名かの者が持っておって。高い小作料を取って貸す。それで、農民達は働くだけで、生活がみんな奪われてしまう。その政策を変えようとした。そうすると一番土地を沢山持っているのが国王。それが土地がなくなるから、こんな大臣を置いちゃいかないと言う。そんなら辞めよう。辞めて百姓している。それを、宝塔建てたと言って十八ヶ月間監獄に入れた。面白いですね。様々な生きた歴史が作られる。――後略――

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